すでに取組みが始まっている「地域包括ケアシステム」の構築

全国の各市町村では、「地域包括ケアシステム構築」の取組みがすでに始まっています。

2025年(平成37年)には、団塊の世代(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、高齢者人口が急激に増加することから、医療や介護の需要が急増すると見込まれています。

そのため厚生労働省は、2025年(平成37年)とその先に向けて、重度な要介護状態になっても今まで暮らしてきた地域で療養生活が続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。

このような状況の中、東京周辺の地域では、日本の中でも特に高齢化のスピードが速く、2025年に団塊の世代が75歳になる頃には、後期高齢者(75歳以上)の人口が、地域によっては現在の2倍に増えると予想されています。このような超高齢社会をいかに切り抜けるかが、緊急の課題となっています。

75歳以上の後期高齢者は、診療所や病院に通院できないケースも多く、介護の必要度が高い状態になっています。そのため、医療や介護を提供する専門職の方々が患者さんを地域の中でケアしていく「地域包括ケア」が必要とされています。この地域包括ケアシステムの中で重要な位置にあるのが、在宅医療です。

東京周辺の地域で、2025年には、現在と比べて、外来患者が数%増えるのに対して、往診など在宅医療のニーズは、80%も増えるとの予想もあります。また、地方の過疎化地域についても高齢者が増え外来通院できない患者さんが増えていることから、今後、かかりつけ医の先生は、患者数を維持するため、診察室で患者さんを待つ外来診療だけでなく患者さんが住む住宅に出かけていき訪問診療・往診を行うスタイルが不可欠になってきます。

 

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図表1   出典:厚生労働省ホームページ「地域包括ケアシステム」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
(URL 2016.8.14確認)より

 

 

 

 

市町村によっては地域包括ケアシステム構築の進みが早く、このシステムで動いている

地域包括ケアシステムの構築は、平成27年4月から郡市区医師会協力のもと全国各地の市町村役場が主体となって進めており、取組むスタイル、進み具合は地域ごとに異なっています。

まずは、自院が属する市町村では現在どのような流れで進んでいるのか、進んでいないのか、把握することが必要です。

 

「地域ケア会議」「多職種連携」

この構築プロセスの中で、地域ケア会議に参加をして顔を出すことで多くの方に自院のことを知って頂くことができ、医療・介護の多職種の方々や医療関係団体等との連携を深めることができます。いろんなところに顔を出すことで、自院に患者さんの依頼をして頂ける機会が増えることになります。

 

在宅医療を積極的に行いたいときは、

できるだけ「地域ケア会議などに参加し」地域の課題を把握するとともに、「医療・介護を提供する多職種の方々と連携する」機会を増やすことです。上手に多職種との連携ができれば 自院の在宅医療を伸ばす ” ことができます。

 

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図表2   出典:厚生労働省ホームページ「地域包括ケアシステム」
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
(URL 2016.8.14確認)より

 

 

 

診療所外来利用者数の将来推計について

東京大学の辻先生は下記の資料を作成され、将来の外来利用者数を推計しています。

これによると、
診療所の医師数は増加傾向にある一方、医師1人1日当たり外来利用者数は減少傾向にあります。

このことからも、
かかりつけ医の先生は、診察室で患者さんを待つ外来診療だけのスタイルから患者さんが住む住宅に出かけていき在宅医療(訪問診療・往診)も行うことが必要になっていると言えるのではないでしょうか。

 

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図表3   出典:在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会「21世紀前半の社会と医療 在宅医療の果たすべき役割~資料~」http://chcm.umin.jp/education/ipw/files/siryou/01-1_zaitakuiryogahatasubekiyakuwari.pdf
(URL 2016.8.14確認)より

 

 

 

在宅医療を始めるときに欠かせないこと

地域包括ケアの中では在宅医療が中核となり、医療・介護専門職との円滑な連携が不可欠となります。

在宅医療を積極的に行っていこうとするときに、自院と患者さんをつなぐ連携のポイントとなる存在が、郡市区医師会、有力医療機関、地域医療連携拠点、地域包括支援センター、訪問看護ステーション、居宅支援事業所(ケアマネジャー)などの機関や事業所です。これらの機関・事業所と良好な関係を保つ事が重要で、これらの機関・事業所と上手く連携できなければ自院の在宅医療を発展させることはできなくなります。

 

 

一部の地域では在宅医療(訪問診療・往診)の供給過多が起こっている

千葉県のある地域では在宅医療(訪問診療・往診)を行う医療機関が多く、
在宅医療を行っている既存の診療所が存在するのに加え、今まで在宅医療に取組んでいなかった診療所や病院が新たに在宅医療に参入、在宅医療を専門に行う診療所グループも参入する状況となっているため、在宅医療の供給過多が起こり、患者さんやご家族の側からすると ドクターが気に入らなければ容易に変更可能な状況になっています。

このような在宅医療(訪問診療・往診)の過剰地域というのは、現時点では、全国的にみて少ないと思いますが、1年後、2年後には自院の近隣が在宅医療過剰地域になっているかもしれません。自ら知り得ない・気づかないところで着実に在宅医療は広まっています。

 

 

 

【まとめ】

2025年問題を想定し、厚生労働省は診療報酬・介護報酬改定等さまざまな対策をとることが予想されます。

「地域包括ケアシステム」の取組みが進んでいることを知らないために、いつの間にか、「なぜか自院の患者さんが減っている」などということが起こってしまうかもしれません。

特に診療所の場合、ホームページに掲載することなく、着々と在宅医療を伸ばしているところが数多く存在しています。診療所の動きは表面に見えてこないことが多いため、見えないところで動いていると思っていた方が後々大変な思いをせずに済むのではないかと思います。

在宅医療専門の診療所は比較的容易に開業することができるため、気づかないうちに在宅医療を行う診療所が近隣に増えているということがあるかもしれません。また、細々と在宅医療を行っていた病院が力を入れて取組んでいるということがあるかもしれません。

気づいたときには自院にとって不利なポジションしか残っていないということになるかもしれませんので、できるだけ早く「地域包括ケアシステム」のことを把握し、このシステムに関わることで自院に優位なポジションを確保しておきたいものです。

 

 

[参照]

全国各地域の「地域包括ケアシステム構築モデル例」